動画を作るカリンの話《後編》

《第2章》2018年4月『スターターピストルが鳴り響く』

 

  新学期、学校の1年間向き合う制作課題のテーマ決めを求められた際に今まで自分が作ってきたものの振り返りも兼ねて、その日帰ってすぐに久々にDSiの電源を入れた。

 

 SDカードに保存していたメモは半永久的に視聴可能なのだが、5年前にメモを作った自分に、私はひどく泣かされることとなった。

 

 そのメモというのが、うごメモのサービスの全てが終わってしまう前に投稿されたGUMIちゃんの『走れ』の動画だ。

(本家様⇨http://www.nicovideo.jp/watch/sm18279200 制作:カリン*,2013年)

 


走れーGUMI【限定公開】

 

ー『私の(うごメモを始めてからの)4年半にムダはありませんでした。』

ー『私はこれからも走りつづけます。』

 

 どうしてこの子は、そんなことを断言出来てしまうほどに、こんなにもたくましいんだろう。

 今の私は、私のうごメモを辞めてからの5年にムダはなかったと言えるだろうか。

 

 

 誰も褒めてくれなくて、評価してもらえなくてボカロを描くのを辞めてしまった自分が確かにそこにいる。

 

『背負ったハンデがまるで不条理でも途中棄権も許されない

 こんなインチキばかりのレースでも 走り続けることしか出来ない。』

 

 どんな気持ちで5年前の私はこの曲を選んだのかな。

 今の私は、びっくりだよ。

 本当に大きくなっても泣き虫で申し訳ないけど、負けず嫌いなのも変わってないから。

 

 

 

 5年前の私が目をキラキラさせて「すごいね!わたしもこんなの作ってみたい!」って言ってくれるような動画を作ることに決めて、また走り出した。

 

 

 ✂︎ーーーーーキリトリーーーーーー 

 

 

《第3章》2018年5月『私のハートの翼』

 

 

 動画を作る。すぐ作る、今やる。一ヶ月以内に。

 そう考えた時に、すぐさま浮かんだのが6月25日「麻倉ももさんの誕生日動画」だった。

 

 この流れでボカロじゃないのか?!とお思いでしょう…

 …6月26日がGIMI誕なのは重々承知です……。

 

 私は、誕生日お祝いメモを作るのが元々好きであったし、誕生日=ゴールがあることで 迷わず真っ直ぐ筋道に沿って走る計画を練ることにした。

 

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 ところで、みなさんは麻倉ももさんという声優さんをご存知だろうか。

 

 告白実行委員会の瀬戸口雛ちゃんやマギアレコードの環いろはちゃん、プリプリちぃちゃんの佐伯夕花ちゃんなどを演じていて、私が声優というジャンルにはまるきっかけになった女性である。

 

 きっかけは、4年前に告白実行委員会のキャラクターソングアルバム『僕じゃダメですか?』で「今好きになる」聴いて、一発でこの人のことをもっと知りたいと思ったことだった。

 

 私はもともとHoney Worksが好きでプロジェクト化する前から「初恋の絵本」を聴きこんでいた流れでのアルバム購入で、田舎なのに発売日に届くよう書店さんに手配してもらうほど楽しみにしていた。

 

 その前段階では、声優さんには詳しくなく 麻倉もも=名前が可愛い人だなぁ。

 それだけ、たったそれだけの印象だったはずだったのにも関わらず、「今好きになる」を聴いてすぐさまネットで麻倉さんについて調べ、ラジオをしていることを知り、活動を追うことになった。

 

 その時、丁度私は病気を患っていて 一年間療養するかという話が出ていたほどに、ほとんど学校にも行けていなくて、年に2枚しかイラストを描けないほど活力のない日々を送っていた。

 

 そんな暗闇から見上げた麻倉ももさんはキラキラしていて、ふわふわで幸せな気持ちになる内容のブログやトーク、それでいて芯のある歌声、女の子らしく愛でたくなる容姿と服装、天真爛漫な性格等々…

それらの全て一枚一枚の羽が翼となって 私の心はふわっと軽く浮き、その瞬間から光のほうへと進んでいけるような感覚になった。

 

 そして、実際に療養することなく、今は元気そのもので学校に通うことができるぐらいには病状は回復することとなる。

 

 こんな大げさに聞こえてしまうような表現しか出来ないのが悔やまれるが、絵をこうして描けるようになった今の私をかたちづくっている大事な思い出のひとつに、麻倉ももさんと出会ったことがしっかりと刻まれているのだ。

 

 だからこそ、はじめてのペンタブ絵での動画は麻倉ももさんの『カラフル』を描くことにした。

 

 

 ✂︎ーーーーーキリトリーーーーーー 

 

《第4章》2018年6月『カラフル』

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『カラフル』

動画制作期間:10日間

再生時間:25秒間

総イラスト枚数:586枚

使用ソフト:CLIP STUDIO、Audacity,Windowsムービーメーカー

 

【工程】

絵コンテ(アナログ)→ラフ(アナログ)→下書き・線画→色塗り→動画編集

 

 驚いた方もいるだろう、今回は無理してAvitulや使用に慣れていないMacBookAirでの動画編集作業を行うことなくムービーメーカーで制作を行ったのだ。

 

 これは、うごメモでの動かし方がパラパラマンガの要領だからこそできたことで、次からはきちんとしたソフトを使用すると思うし、おすすめはできない。

 

 しかし、手元にあるものだけでもやろうと思えば可能であることが、今回のことで身をもって理解することが出来たのは大きな成果だろう。

 

 制作をしている10日間は「つらいな」「やめたいな」と思いながらもうごメモをやっていたころの感覚が戻ってきていて、やっぱり自分の絵が動いているとき一番愛しい思えると切々と感じ、くりむにLINEで逐一進捗を報告しながら、作業をし二人で会話する時、確かにあの瞬間私たちはあの頃のこどものままで、死んだと思っていたうごメモという愛しいわたしの世界は今も違う形で息を吹き返していた。

 

 

 少し話がそれるが、中学時代の吹奏楽部の顧問が

「『音楽』という言葉は『音が楽しい』って書くけど、やればやるほどそれは『音が苦(おん・が・く)』になっていく。

 そして、その山を越えたらまた楽しくなったり苦しくなったりする。

 これは音楽以外でもそうで、のめりこめばのめりこむほど、それの繰り返し。」

 と言っていた。

 

 また同じく、中学生時代の担任の趣味がマラソンで、

「走ってる時はつらくてやめたくて、こんなのやってられるか?僕は馬鹿なのか?って思う。

 でもやっぱりそれでも走るし、ゴールしたら地球上で一番幸せってくらい幸福感に満たされる。それが僕の好きなこと。」

 と言っていた。

 

 当時は、週のほぼ全てのスケジュールを埋めていた複数の習い事を嫌なものから順番にやめていっていた頃だったので、なんでいやなことを自分からするんだ…この人たちはとんでもなくMなんだなって思っていた。

 

 しかし、今ではその気持ちが分かるので、私が大変なMか、または 嫌いになりきれず続けられることこそが好きなことという真理なんだと思う。

 

 

 そんなことを考えつつ、迎えた25日は夢のようにすぎていって。

 25日が終わってしまうのが名残惜しくて、日付が変わるのを見届けてから深い眠りについた。

 

 

 ✂︎ーーーーーキリトリーーーーーー 

 

《最終章》『志を立てるのに遅すぎると言うことはない』

 

 

 わたしは昔からやりたいことを後回しにして、やるべきことからする性格であった。

 端から見れば、何の問題もない良い子なんだろう。

 

 幼少期、お子様ランチで嫌いな食べ物から義務として先に食べて、最後にとっておいた大好きな唐揚げがお腹いっぱいで食べられず悔しい思いをしたわたし。

 

 夏休みが始まる前から宿題をはじめ、まだ夏休みが始まって2日なのに「先に宿題を終わらせたいからポケモンの映画はまだ行かない」とかたくなに親に訴える真面目なわたし。

 

 勉強が順調だったからこそ絵の勉強がしたいと言い出せず、病気になってやっと初めて親に本音を打ち明ける不器用なわたし。

 

 先にペンタブで絵が描けるようにならないと、みっともなくて動画なんて作れないなんて考えてしまう強情なわたし。

 

 

 そんな私にかける母からの言葉は決まって、こうだ。

 『今、自分がしていることが 人生の最善の選択である。』

 

 その母の口癖はよく言ったもので、この言葉のおかげで焦らずとも迷わずとも、後悔しそうになったときに自分の決めた道は間違っていないよ、と背中を押してくれている。

 

  やりたいことを後回しにして、それをやり始めるのが どんなに遅くなったとしてもだ。

 

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 『志を立てるのに遅すぎると言うことはない』(スタンリー・ボールドウィン)

 

この言葉は、私の好きな言葉なのだが

 私が幼稚園の時に2回目の大学進学をした母とか、大学8年通った後のニート生活から一転一家の大黒柱してる叔父さんとか、大学中退した後の方が好きなことやって明るくなった従兄とか、72歳で家出るって言い出して人生で初めての1人暮らし始める祖母とかを見ていると、遅すぎるなんてことはないんだとほっと安堵する。

 

全く新しいことでも始めてみたら、どこかで過去の自分と繋がっている。

その感覚を忘れずに着実に積み重ねていきたいなと常々感じるのだ。

 

 だからこそ いつかまた、私が立ち止まった時のために 胸を張ってここで言っておこう。

 

 私の9年半にムダはなかった。

   これからも走り続けます。

 

 

 ここまでが私がPCで動画を制作するまでにかかった9年半の間のお話でした。

 

ではまた来年も動画で会えたら、そのときに!

 

 長らくのお付き合いありがとうございました。

 pixivの方にカラフル動画のツイッターにアップしていない分のカットも含めたものをアップしています。

 

【麻倉もも】「カラフル 麻倉もも」イラスト/カリン* [pixiv]